社内問い合わせ管理の問題点と改善策。おすすめのツール9選
社内問い合わせは、総務や情報システム部など各部門がコア業務の合間を縫って対応するため、管理上の問題が多数発生します。社内問い合わせ管理の問題点と改善策を整理し、業務効率化が図れるツールの導入を検討しましょう。
社内問い合わせが減らない原因とは
リモートワークへの移行やVPNの導入などが進み、社内問い合わせの管理は複雑化しています。しかし、従来の電話・メール依存のヘルプデスクでは、改善策を講じないまま工数ばかりが肥大化しているのが実情です。
マニュアルが更新されない
社内問い合わせは、人事・経理・法務・情報システム(情シス)などの各部門で発生します。これらの部門ではそれぞれ独自に、ヘルプデスク業務のマニュアルやFAQ(よくある質問)を作成していることが一般的です。
しかし、各部門ではそれぞれのコア業務があり、ヘルプデスク業務はコア業務の合間を縫って行われます。
業務の性格上、部門内ではマニュアルやFAQについての情報共有がなされず、更新されない仕組みで各担当者がヘルプ対応し、ベテラン社員からのナレッジ共有も進まないという状況に陥りやすいでしょう。
また、質問者からすればどこにFAQがあるか分からず、利用されていないという状況も起こります。結果としてマニュアルやFAQは更新されず、同じような質問に統一されていない対応を取り続けるという悪循環が生まれます。
自己解決できない環境
各部門にはそれぞれのナレッジベースがあり、質問者の認識と一致しない専門用語を使ってFAQを作成しているケースが一般的です。
質問者からすれば平易で直感的なキーワードでの回答が得られず、FAQの内容に最新情報が反映されていない状況もあって、結局は「聞いた方が早い」としてヘルプデスクに連絡します。
実際のところ、社内問い合わせの多くは、FAQさえ整っていれば社員が自己解決できる問題です。しかし各部門では、質問が絶えない中でマニュアル・FAQの更新に時間を割けず、場合によってはクレーム対応にも追われます。
社員が自己解決できる環境さえ整えば、社内問い合わせ管理の多くの問題は解消するでしょう。質問する前に社員が自己解決でき、対人でのヘルプデスク業務を削減できる、スマートな仕組み作りが急務といえます。
質問と回答をデータベース化
社内問い合わせ管理の問題を解決するには、まず質問と回答をデータベース化することが重要です。これによって、ヘルプデスクにとっても質問者にとっても、さまざまなメリットが生まれます。
ユーザーの傾向が見えてくる
社内問い合わせ管理に問題を抱えているヘルプデスクでは、業務ナレッジが属人化している傾向があります。担当者が突然退職したり部門を離れたりしてしまうと、業務ナレッジが失われてしまい、問題は悪化するでしょう。
特に、ベテラン社員が持つ業務ナレッジはドキュメント化し、棚卸しをすることが重要です。また、よく受ける質問と回答の統計をデータベース化し、部門内で共有しましょう。
これらの作業により、質問者の傾向と担当者の対応が可視化でき、何を改善すべきかが見えやすくなります。
ドキュメント化・データベース化はオフィスソフトや『CRM(顧客関係管理)システム』などで可能ですが、多大な工数が発生することはネックです。
社内問い合わせに特化したチャットボットやFAQシステムであれば、比較的簡単な手続きで導入・メンテナンスを行えます。
過去のケースを参照でき双方にメリット
電話対応が中心のヘルプデスクでは、作業内容の履歴が残しづらく、部門内での情報共有が困難です。誰がどのような質問に対応しているかが見えづらく、同時に複数名が同じような質問に対応するケースもあり得ます。
社内問い合わせを社内情報共有ツールやFAQシステムで行えば、質問内容・担当者・進捗状況を可視化でき、自動的に作業履歴も残せます。
ツール上で質問内容を確認して最適な担当者が介入・引き継ぎできるため、ヘルプデスク全体で業務効率化が図れるほか、質問者の満足度が向上することもメリットです。
データ管理の方法
質問・回答のデータベース化を目指す際、担当者それぞれがデータベースに登録する仕組みにすると、担当者の負担が増してしまい非効率です。
企業によっては、データベース化を担当するチームを作り、分業する施策を打っています。あるいは、『RPA(Robotic Process Automation)ツール』を活用することも一つです。
RPAツールでは、「メールのやりとりをCRMシステムに自動登録する」といった、複数のアプリケーションにまたがった業務自動化を行えます。
データを上手に活用する方法
質問と回答のデータベース化と運用に当たっては、質問者にとっての理解しやすさ・検索しやすさを重視しましょう。
質問者をスムーズに回答へ誘導し、自己解決が促進できれば、社内問い合わせ管理の多くの問題は解決できます。
情報の掲載方法は統一する
ヘルプデスクを設置する各部門では、それぞれに独自のルールで社内サイトを構築しているケースがあります。質問者が抱える問題によっては、仕様の統一されていない複数の社内サイトで情報検索することが必要です。
そこで、社内ポータルサイトを一つに統合するという施策が考えられます。部門横断的なルール統一を図る方法もありますが、レイアウトや検索経路、FAQページの仕様までそろえるのは困難です。
社内ポータルサイトを刷新する場合、各ページで情報の掲載方法の統一も図りましょう。サンプル投稿でテンプレートを示しておけば、その後に続く投稿もスムーズです。
回答は専門用語をなるべく使わない
FAQを利用する質問者は、自身が理解している言葉でキーワード検索を行います。たとえば『Outlookのスケジュール機能』について、質問者が『予定表』としてキーワード検索するような場合です。
この場合、スケジュール機能についての記述があっても、予定表という単語が含まれていなければ検索にヒットしません。
各部門で当然に使われている専門用語であっても、質問者の検索意図に合致しないケースがあります。FAQで自己解決を図るためには、FAQページに平易な言葉や、関連キーワードを記述することが重要です。
また、問題解決までの手順についても、どのような質問者でも理解しやすい内容に整えましょう。手順が分からなければ、結局ヘルプデスクへ質問が回ることになります。
目標に合ったツールで自己解決を目指す
質問者の自己解決を促進すること、これこそが社内問い合わせ管理の問題解決にとって根本的な課題といえます。これを実現するツールにはさまざまな種類があるため、運用中のシステムとの相性や導入障壁なども検討しましょう。
運営側もユーザーも使いやすいツールを選ぶ
新規のIT技術や制度の導入は、社員からの問い合わせ件数を増やすだけでなく、社内問い合わせ業務の内部でも混乱を招きます。
特に情シス部門では対応に追われやすいため、社内問い合わせツールの導入には注意が必要です。すでにヘルプデスクの業務内容が複雑化している中、新しい社内問い合わせツールを導入すると、工数は肥大化するでしょう。
情シス部門はもちろん、ヘルプデスクを設置する全ての各部門にとって、導入難度が低いツールを選ぶことが重要です。
また、質問者からしても新しいツールになじむための時間や労力がかかります。社内問い合わせシステムの導入効果を高めるには、社員全員にとって理解しやすく使いやすいツールを選択することが重要です。
高度な検索機能を持ったFAQシステム
FAQシステムとは、FAQ機能に特化した、高度な検索機能を備えたシステムの総称です。顧客用として使われることも多いツールですが、社内問い合わせ業務の複雑化に伴い、社内向けに利用されるケースが増えています。
FAQを作成する簡単な方法としては、Excelシートや社内サイトのFAQページを作ることが挙げられます。しかし、これらの方法では検索機能が貧弱な傾向があり、質問者の検索能力次第では回答にたどり着けません。
FAQシステムでは、AI(人工知能)を活用した絞り込み検索などの機能を備えるため、質問者による自己解決につなげやすいことが利点です。
属人化を防ぐ社内情報共有ツール
社内情報共有ツールとは、グループウェア・社内SNS・オンラインストレージなど、社内で情報共有に利用するツールの総称です。
社内情報共有ツールを利用しないヘルプデスクでは、社内問い合わせ業務が属人化しやすく、社内のシステムが複雑になるほど業務効率や労働環境は悪化する傾向にあります。
この状況は、各部門のコア業務を圧迫するだけでなく、社員の満足度低下にもつながるでしょう。社内情報共有ツールを活用することで、ヘルプデスク業務の視覚化やフォロー、問題の部門横断的な早期解決が図れます。
直接聞きたいニーズに応えるチャットボット
チャットボットとは、チャットツールで自動応答を行うプログラムの総称です。事前に設計したシナリオ通りに応答するチャットボットもありますが、AIの搭載により、学習内容を随時反映するAIチャットボットもあります。
高性能なチャットボットは自然な文章にも対応するため、質問者は専門用語を意識することなく検索できます。24時間365日稼働でき、応答は瞬時に行われるため、社内問い合わせの工数を大幅に削減できることもメリットです。
チャットツールというシンプルで使い慣れたインターフェースを利用するため、社員がなじみやすく、比較的容易に導入できます。
操作性のよいFAQシステム3選
社内問い合わせ管理の問題解決にとって、FAQの整理は必須といえます。さまざまなFAQシステムの中から、操作性のよいツール3選を紹介します。
回答候補表示で迷わない sAI Search
株式会社サイシードが提供する『sAI Search(サイサーチ)』は、高速・高精度な絞り込み検索ができるFAQシステムです。
独自開発のAIを搭載し、キーワード検索では自然な文章に対応した絞り込み検索が行えます。また、直感的に検索タグを選択していくだけで、目的の回答にたどり着くことも可能です。
FAQデータをアップロードするだけで検索タグが自動付与されるため、容易に導入できます。また、急上昇トピックやカテゴリ別による検索も可能で、検索効率の大幅な向上につなげられます。
sAI Search
顧客向けFAQも一元管理 FastAnswer2
テクマトリックス株式会社が提供する『FastAnswer2』は、複数の社内サイト・Webサイトを一元管理し、社内向けFAQ・顧客向けFAQを一つのシステム上で利用できるFAQシステムです。
FAQ・マニュアル・Webサイトなどの情報を全てFAQナレッジとして管理する上、質問内容もナレッジに反映します。
問い合わせ窓口を一本化できるほか、「FAQが最新の情報に更新されない」という悩みを解決できる点もメリットです。また、CRMシステムとの連携もできます。
FastAnswer2
適確な分析で更新作業をスムーズに TRUE TELLER
野村総合研究所が提供する『TRUE TELLER FAQナレッジ』は、FAQの公開までの複雑なワークフローを、トータルにサポートするFAQシステムです。
自然文での検索に対応し、カテゴリや製品名などの属性検索も利用できます。FAQの利用状況や検索ログなどはさまざまな分析を行い、可視化された結果から改善点を見つけ出すことも容易です。
さらに、FAQの作成依頼や承認なども一元管理できるため、一つのツールでFAQの検索・分析・追加修正・承認のプロセスが完結します。
TRUE TELLER
社内情報共有を効率化するツール3選
すでに何らかの社内情報共有ツールを導入していても、社内問い合わせ管理には効果を発揮していないケースが考えられます。利用者の心理的障壁をクリアしやすい、社内情報共有をスムーズに行えるツール3選を紹介します。
情報発信スピードが上がる esa
合同会社esaが提供する『esa』は、記事を書き途中(WIP)でも公開することが可能で、後から随時更新していく方式なので、いつでも気兼ねなく編集可能なツールです。
記事はWIPであることがひと目で分かり、WIPの記事は何度編集しても以前のバージョンに戻せます。さらに、記事の同時編集も可能です。
一般的なツールは情報公開までに承認が必要で、情報発信が停滞しがちです。とりあえず不完全なWIPでも上げてしまい、完成すればしっかり整理するというesaでは、情報発信スピードを優先したシステム運用ができます。
esa
登録も共有も簡単 Qiita Team
エンジニアが持つ知識の公開・共有サービス『Qiita(キータ)』を運営するIncrementsが提供する『Qiita Team』は、記事作成・共有・コミュニケーションをシンプルな方法で行えるツールです。
記事はプレーンテキストを書くだけで読みやすく仕上がり、日報・議事録用などにテンプレートも作成できます。投稿した記事はフィードに共有され、記事ごとのコメント欄で議論も可能です。
Qiita Team
高い利用率が期待できる機能 Qast
anyが提供する『Qast』は、「Q&A」と「メモ」でナレッジを共有する、シンプルな機能・インターフェースのツールです。
誰でも簡単に記事を投稿でき、情報がどこにあるかも容易に把握できます。また、投稿数や反応数によって貢献度がスコア化されるため、自発的な投稿の促進が可能です。
テンプレートの作成や、匿名での質問、既読人数の可視化機能も備えます。さらに、PDF・Word・Excel・PowerPointファイルを添付した際には、ファイル内の文字列が検索対象になる仕様です。
Qast
自動で賢く対応するチャットボット3選
対人のヘルプデスク業務をチャットボットで代替することは、社内問い合わせ管理の問題解決にとって非常に有効な選択肢です。FAQを登録して賢く自動応答する、AIチャットボット3選を紹介します。
対話履歴や評価が見られる My-ope office
mofmofが提供する『My-ope office(マイオペオフィス)』は、直感的な対話学習UIを備えた、話しかけて育てられるAIチャットボットです。
ルールベースの対話データはCSVファイルで一括流し込みができ、ツリービューで俯瞰しながら対話のシナリオ構築もできます。
『GOOD or BADボタン』の採用により質問者のフィードバックを確認でき、質問者とチャットボットとの会話履歴の閲覧も可能です。
My-ope office
環境に合わせてカスタマイズ hitTO
ジェナが提供する『hitTO』は、『IBM Watson』と独自開発の『hitTO AI』という二つのAIを搭載したハイブリッド型AIチャットボットです。
hitTO AIは自動学習による精度向上が可能で、作成したAIチャットボットはWebブラウザ経由ですぐに利用できます。
PC・スマートフォン・タブレットなどマルチデバイスで利用でき、LINE WORKSやMicrosoft Teamsなどのビジネスチャットとの連携も可能です。
hitTO
AI家電の技術を活用 LINC Biz bot
『LINC Biz bot』は、シャープの100%出資子会社であるAIoTクラウドが提供するAIチャットボットです。
シャープのサポート窓口での大規模運用ノウハウや、AI家電開発で培った自然言語処理技術を応用し、初心者にも使いやすい高精度なAIチャットボットを実現しています。
ExcelでまとめたFAQデータを登録するだけでチャットボットの構築が完了し、運用中はAIからの改善レコメンドを受けて継続的かつ簡単なメンテナンスが可能です。
LINC Biz bot
まとめ
リモートワークへの移行やVPNの導入などが進み、社内問い合わせ業務の重要性は増しています。対人のヘルプデスクから、24時間365日稼働できるFAQシステムへの移行が急務といえるでしょう。
ただし、デジタルテクノロジーを導入するほどシステムは複雑化するため、導入障壁やメンテナンスについても検討することが重要です。
AIチャットボットを利用した賢いFAQシステムを構築し、業務効率化と労働環境の改善を図りましょう。