FAQシステムはAIで検索精度アップ。AIにできることを紹介

AI(人工知能)搭載のFAQシステムを活用すれば、検索精度を大きく高められます。ただし、導入効果を発揮するには、入念な事前準備が大切です。FAQシステムにおいてAIができることや、利用率を高めるポイントについて解説します。

AIがFAQシステムに活用される理由

「Frequently asked Questions」の文字に虫眼鏡が置かれている

「AI(人工知能)搭載のFAQシステムを導入すれば、社内問い合わせの問題は解決」という声も聞かれます。しかし、AIが効果を発揮するには、人間の手による適切な介入が必要です。まずはFAQシステムにおいてAIができることを解説します。

機械学習や言語識別ができる

AIに明確な定義はありませんが、従来のコンピューターよりも人間に近い『知能』を備えるコンピューターの総称です。AIが備える『機械学習』や『言語識別』といった機能は、FAQシステムに有効活用されています。

機械学習とは、AIにサンプルデータ(教師データ)を読み込ませ、単一の命令ではなく事象のパターンを学習させることです。これによって、質問の意図を「推論する」AIを育てられます。
また、英語や日本語といった自然言語を理解・識別し、人間と自然文(自然な文章)によるコミュニケーションも可能です。

求められていた機能の実現

AI搭載のFAQシステムは、受けた質問と関連度が高いFAQをサジェストしたり、FAQの表示順を解決率によって並び替えたりできます。AIの学習が進むほど、FAQの精度も向上する仕組みです。

数あるAIの中には、対話のシナリオ設計や、言い回しの調整が不要なものもあります。シンプルに質問を登録するだけで、さまざまな対話のパターンに対応可能です。

なお、FAQシステムで活用できるチャットボットには、AI搭載・非搭載の違いがあります。AI非搭載なら、事前設計したシナリオ通りの回答しか返しません。AI搭載なら、機械学習や言語識別の機能を生かし、柔軟な対応ができます。

AI型FAQシステムの種類

「ARTIFICIAL INTELLIGENCE」と印刷された紙

さまざまなタイプがあるFAQシステムの中で、AIを搭載するのは大きく分けて2種類です。ナレッジ共有型システムと、人工知能型チャットボット(AIチャットボット)の違いを解説します。

ナレッジ共有型システム

ナレッジ共有型システムとは、FAQとして公開するナレッジと、専門知識やマニュアルなどの社内ナレッジを、トータルに情報共有できるツールです。

AIを搭載したシステムなら、高い検索精度を発揮する上、ナレッジ活用の自動化もできます。FAQの運用結果を分析して社内ナレッジに落とし込み、社内ナレッジをFAQの改善やスタッフ研修・顧客対応に生かせるシステムです。

人工知能型チャットボット

AIチャットボットは、チャットによる問い合わせ窓口として独立運用できる他、FAQシステムと組み合わせてFAQページに設置もできます。 質問者は自然な言葉でチャットに質問を入力し、AIチャットボットは質問者の意図を読み取って問題解決に導きます。あいまいな質問でも意図を推論して、自動的に対話を進めていくシステムです。

チャットで解決に導けなかった場合のみ、最終的に有人のヘルプデスクへ誘導する仕組みも構築できます。AIチャットボットの導入を検討するには、FAQ件数の多さが目安となります。

FAQの数が50件程度であれば、AI非搭載のチャットボットでも対応できるでしょう。300件程度までなら、AIチャットボットで対応できます。300件を超える規模なら、FAQシステムでナレッジ共有をするのがおすすめです。

導入までの流れ

勉強中の机の上

AI搭載のFAQシステムを導入するなら、検索機能をAIが担っている限り、教師データの準備が必要です。導入前の手順として、AIの活用方法を検討してから、教師データの準備をする流れを解説します。

AIの活用方法を検討

すでに何らかのFAQシステムを運用しているなら、AIの導入方法は大きく分けて2種類です。

  • 運用中のFAQシステムから、AI搭載のFAQシステムに乗り換える
  • 運用中のFAQシステムはそのままで、AIチャットボットを導入する

前者では、検索窓で自然文検索や絞り込み検索ができるようになり、検索効率が増します。蓄積した運用データを流用し、質問者が使いやすいツールへ移行することで、顧客満足度の向上が可能です。

後者では、自社サイトや既存のFAQページにチャットを埋め込むだけで、質問者の検索効率を向上できます。大掛かりなシステム変更が起こらないため、導入障壁の低さは魅力です。

学習用のデータを準備

AI搭載のFAQシステムは、導入に当たって学習用の教師データを必要とします。優れたAIを搭載していても、自社のFAQリストを学習しなければ、質問者が納得できる対応はできません。

教師データはシステムのフォーマットに合わせることが必要です。既存のFAQデータはそのまま流用できないケースもあります。十分な教師データの準備には、多大な労力を要するケースもあるでしょう。

回答が分かりやすいか見直す

FAQシステムにとって最も重要なのは、システムの利用が質問者の自己解決につながるかです。労力をかけてFAQシステムを導入しても、質問者にとって使いにくければ、ヘルプデスクへの問い合わせは減りません。

運用開始前に、回答の内容や対話の階層構造を見直すことが大切です。FAQページの文章や画像は読みやすく見やすいか、AIチャットボットの返答が自然かどうかを、入念にチェックしましょう。

ルールを統一する

AIチャットボットの正答率は、導入効果を図る指標の一つです。教師データの語尾や語句が不ぞろいであれば、正答率も下がってしまいます。ここで、『正規化』の手順が重要です。

FAQの重複をなくし、シンプルかつ一貫性のあるルールのもと、教師データを再構築します。正規化のプロセスは、対話のシナリオや『スロット・フィリング』の設計も兼ねます。

スロット・フィリングとは、質問者とやり取りを繰り返して必要な情報を得て、全てのスロット(情報)が埋まった段階で、特定のタスクを開始する機能です。設計に必要なシナリオは、ヘルプデスク業務の履歴から得られます。

すぐに運用開始できるAI搭載ツール3選

木で作られた「FAQ」の文字

AI搭載のFAQシステムやチャットボットを導入する場合、多くのツールで教師データの準備に1〜2カ月程度はかかります。 運用開始を急ぐなら、教師データの準備に手間がかからないツールを選びましょう。すぐに運用開始できるAI搭載ツール3選を紹介します。

管理者とユーザーにやさしい My-ope office

mofmofが提供する『My-ope office(マイオペオフィス)』は、シンプルなインターフェースで、導入後も簡単に利用できるAIチャットボットです。

対話のシナリオはCSVで一括流し込みができ、導入もメンテナンスも簡単に行えます。しかし、電話やメールで問い合わせをする文化が根付いた企業では、チャットボットの利用に切り替えるのは困難です。

mofmofでは、導入企業の担当者向けに、チャットボットを使ってもらうためのコンサルティングも行っています。
My-ope office

導入までがスピーディー Qontextual

『Qontextual(コンテクスチュアル)』は、学習にかける時間を大幅に削減できるFAQシステムです。

搭載するAIはWikipediaのテキストを学習済みで、辞書登録やカテゴリ分類は必要ありません。必要な事前準備は、ExcelシートにまとめたFAQデータを読み込むだけです。最短当日から利用できます。
Qontextual

『sAI Search(サイサーチ)』は、顧客向けにも社内向けにも利用できる、高速・高精度なFAQシステムです。自然文検索やサジェスト機能にも対応しています。

選択できる基本プランは、社内向けページ型・顧客向けページ型など5種類です。より豊富な機能を追加したければ、FAQ作成や精度チューニングなど、さまざまなオプションを必要に応じて選択します。
sAI Search

まとめ

AI非搭載のFAQシステムでは、キーワード検索によって問題の解決方法を探します。この方法は質問者にとって利便性が悪く、「面倒だからヘルプデスクに電話」と考える人も珍しくありません。

AI搭載のFAQシステムを導入すれば、質問者は自然な文章で検索でき、AIから提案も受けられます。AIチャットボットと組み合わせれば、最小の画面遷移で回答に導けることも魅力です。

ただし、教師データの準備には労力を要します。コンテンツ面をしっかりと準備した上で、チャットボットを利用してもらえる文化づくりにも注力しましょう。