カスタマーサポートの立ち上げから運用までの流れ
カスタマーサポートは企業にとって欠かせない部門であり、サポートの質向上は顧客エンゲージメントの向上と売上げ増加につながります。これからカスタマーサポートを導入する企業向けに、立ち上げから運用までの流れ、導入時の注意点を解説します。
カスタマーサポートの主な役割
カスタマーサポートとは、電話やメール、チャットなどで顧客からの問い合わせに対応する仕事で、自社の商品・サービスに関する顧客の疑問を解消するのが主な役割です。さらに、顧客からの質問に回答するだけではなく、以下の役割も担っています。
既存顧客のリピート率を上げる
顧客の疑問や不満点を解消することで、自社の商品・サービスのリピート購入率を高める役割があります。顧客の状況を改善できるサービスを提案したり、新商品を勧めたりするのもカスタマーサポートの重要な仕事です。
ビジネスでは新規顧客からの売上げ以上に、既存顧客からのリピート購入が重要であるため、良質なサポートで顧客エンゲージメントを高め、継続的に購入してもらえるように促す必要があります。
顧客満足度の向上
カスタマーサポートは顧客と直接コミュニケーションを取るのが業務です。顧客が満足する対応ができれば自社に対する印象が良くなり、満足度の向上につながります。
顧客は企業の対応をブログやSNSなどで発信することも多いため、質の高いサポートを提供できれば、それが良い評判として広がることで、新たに顧客を獲得できるチャンスも増加するでしょう。
逆に、顧客の不満が残る対応をしてしまうと、それがSNSなどで拡散されて企業として大きなダメージになってしまう可能性もあります。カスタマーサポートは、企業の評判を左右する重要な役割を担っているのです。
サービス改善の声を集約
顧客の生の声を集約して、商品開発やサービスの改善につなげる役割も持っています。商品・サービスに対する顧客からの批判や意見などを集約することで、より顧客に寄り添った効果的な改善案を出せるようになるでしょう。
多くの企業では、アンケートを実施して顧客の意見を収集しています。カスタマーサポートに寄せられる問い合わせや意見、クレームなどは顧客の本音が反映されているため、顧客ニーズをより正確に拾い上げ、自社の業務改善に活かせるようになるのです。
カスタマーサポートの立ち上げ手順
それでは、一般的なカスタマーサポートの立ち上げ手順を押さえておきましょう。
なお、カスタマーサービスとコールセンター、ヘルプデスクは同じような文脈で使われることが少なくありません。ここでは電話やメール、チャットなどのチャネルを利用して、顧客からの問い合わせに回答する部門をカスタマーサービスと定義し、その立ち上げの流れを解説していきます。
1.現状の課題と目的の明確化
カスタマーサポートを立ち上げるにあたって、まずは現状の課題の認識と目的の明確化が必要です。単に「顧客からの問い合わせに対応する部門を立ち上げる」という視点だけではなく、具体的に自社のどういった課題を解消するためのものか、何を目的として顧客サポートを行うのかを明らかにしておきましょう。
例えば、自社が大々的に売り出したい目玉商品を市場に浸透させるのが目的であれば、通常の顧客対応とは別に、その商品専門の問い合わせ対応窓口を設置するといった施策が必要になるでしょう。
2.サポートセンターの全体設計
立ち上げの目的を明らかにしたら、カスタマーサポートの全体設計を行います。具体的な業務プロセスと顧客情報の管理方法、そしてそれらを効率的に運用するための組織体制を考える必要があります。加えて、顧客に良質なサポートを提供するための人材育成の要素も欠かせません。
通常時のサポートスタッフの業務フローを設計し、正確かつ効率的に顧客情報を扱うためのシステムはどうするか、そして優秀なスタッフを確保・教育するためのプランの設計を行いましょう。
特に、管理システムの導入は相応のコストがかかるため、自社の環境に合った顧客管理システムやCTIシステムは何か、慎重に検討する必要があります。
3.部門の構築とシステムの実装
全体設計にしたがって組織を立ち上げ、スタッフの配置やシステムの実装を行っていきます。業務の進め方やシステムの導入・運用方法を定めたマニュアルを作成し、業務開始に向けて人材の採用・育成を進めていきましょう。
特にカスタマーサポートにはさまざまな機器が必要で、システムの構築にはかなりの時間を要します。できるだけ綿密な導入計画を立てておき、必要であればシステムベンダーの協力を仰ぎましょう。
また、サポートスタッフの就業環境を整えるための時間も必要です。什器や各種備品も忘れずに手配しておきましょう。業務開始に問題なく間に合うように、実装期間は長めに取っておく必要があります。
立ち上げにあたっての注意点
続いて、カスタマーサポートの立ち上げにあたって留意すべき事柄を解説します。カスタマーサポートに限らず、企業の業務部門は実際に運用しながら改善を繰り返す必要がありますが、立ち上げ後に思わぬ損失を被らないためにも、以下の点は注意しておきたいところです。
初期費用・運用コストの試算
カスタマーサポートを立ち上げるのに必要な初期費用と、運用コストをできるだけ正確に試算しておくことが重要です。新しくサポート部門を立ち上げる場合、さまざまな機器やシステム、備品などが必要になるため、企業として大きな初期費用を負担しなければいけません。
全体にかかる費用を試算して、予算内で問題なく運用が可能かシミュレーションしておきましょう。予算不足が発覚した場合、導入するシステムを変更したり、採用する人員を削減したりする必要があるかもしれません。
立ち上げ後に思わぬコストがかかってしまうことは珍しくないため、できるだけ予算に余裕を持たせておくことも大事です。
顧客の視点から運用体制を考える
顧客の視点から最適な運用体制を考えることも重要です。業務を効率的に進められる体制を整えることは基本ですが、顧客の視点が抜けていると、顧客にとって利用しづらいカスタマーサポートになってしまう可能性があります。
顧客視点に立って、どういった対応をするべきか、そのために必要なシステムは何かを考えましょう。例えば、新商品のリリースによって顧客からの問い合わせが増えることが予想されるならば、有人対応だけでなく、24時間365日顧客対応が可能なチャットボットなどの導入を検討するのもおすすめです。
また、カスタマーサポートの品質管理は企業の売上げに直結するので、特に繁忙期に顧客対応がおろそかにならない体制づくりも求められます。
まとめ
カスタマーサポートの立ち上げは、まず現状の課題と目的の明確化からスタートし、全体設計にしたがってスタッフの配置や必要なシステムの実装を進めるのが一般的です。
立ち上げにあたっては、コスト管理を徹底することが重要で、自社の都合だけでなく顧客の視点から運用体制を構築しましょう。
特に、近年のカスタマーサポートはマルチチャネルでの顧客対応が当たり前になっており、顧客がいつでも商品やサービスに関する疑問点を解消できる体制になっていることが望ましいといえます。できるだけ綿密に計画を立て、余裕を持って導入を進めましょう。