社員が使いたくなる社内チャットボットの条件

社内チャットボットを導入する際の注意点として挙げておきたいのが、「導入しても使われない」という事態が起こり得ることです。 これまでに新しい社内ツールの導入に関わった担当者であれば、この難題に直面した方も少なくはないと思います。一般的に新しい取り組みや新制度には、社員はどうしても腰が重くなりがちです。 社内ヘルプデスク用のチャットボットを導入したにも関わらず、相変わらず電話で質問をしてくる社員がたくさんいる等、なかなか既存の枠組みから出て、新しい流れに乗ってくれる人は少ないものです。かと言って、社内の電話機をすべて取り払うというショック療法では反発を買うだけです。 やはり、社員が使いたくなるチャットボットを作ることが先決で、そのための工夫をどのようにしていくべきかを模索すべきです。

以下は、実際にチャットボットを社内運用する企業20社に取材し、チャットボット導入において、どのような工夫をしたか、その共通点をまとめたものです。

使われるチャットボットを作るための大前提

チャットボットを作っていく上で、当たり前のようで難しく、そして最も重要なことが、社員(エンドユーザー)から「役に立つチャットボットだ」と思われることです。これがどうして難しいのかというと、「役に立つ」と思ってもらうためには、エンドユーザーの期待値を超える必要があるからです。期待以下ではもちろんNGですが、期待どおりでもまだ足りません。期待” 以上”の結果を出して初めて、ユーザーは「また使おう」となります。 これは日常の消費体験を思い出してみるとすぐに気づきます。例えば、期待もせずに何となく初めて入った飲食店の料理が、想像以上に美味しかったとき、「また来たい」「今度は友達と来よう」となるものです。つまり良い意味でギャップを生み出すことが重要であり、これが使われるチャットボットを作っていく上での大前提となります。 gapmap

特にAIチャットボットの場合、人工知能への過度な期待、万能イメージが一般的に昨今広がっています。しかしご存知の通り、人工知能だからといって何でも出来るわけではありません。万能人間がいないことと同様に、万能AIも存在しません。このことを社員に理解してもらうために、今回導入するチャットボットが、どのように受答えをしてくれ、どこまでの業務範囲をカバーしてくれるのか、ある程度社内で共通認識が持たれるようアナウンスしておくことが大切です。つまり社員がチャットボットに期待するイメージと実際にチャットボットが提供できる役務をピタリと一致させるお膳立てを、導入当初にきっちりとしておくことで、チャットボットは長く社員の有能なパートナーとして認められるようになるのです。

普段の業務導線にチャットボットを設置する

次に意識すべきは、社員(エンドユーザー)が日常業務を遂行する際の導線上に、チャットボットが設置されているかという点です。業務中に疑問がわき、誰かに訊きたくなるタイミングや場所は、よく観察すると一定のパターンが存在することに気づきます。その状況下で、なるべくストレスを感じることなく、即座にチャットボットに質問ができる環境を作っておくことが重要です。 そのような環境は、企業によっては社内ポータルサイトかもしれません。ただし社内ポータルのどこにどのようにチャットボットが待ち構えていれば、使いやすいものとなるかはよく考える必要があります。 またある企業にとっては、全社的に使われているチャットツールが適切かもしれません。チャットツール内の連絡先リストに、チャットボットが人間社員と同様に並んで表示されている状況です。 chattoolgamen

ある企業では新入社員がチャットツールを社内で始めて開いたその瞬間に、自動的にチャットボットが「社内の分からないことは私に聞いてくださいね!」と話しかけて来て、真っ先にチャットボットとの会話スレッドが作られるよう設定してあります。こうすることで、「何か質問があった時にはチャットボットに聞いてみよう」という意識を新入社員に持ってもらえるようになります。

一貫したキャラクター設定の重要性

最後に述べておきたいのが、チャットボットのキャラクター作りです。うまく行っている企業では、チャットボットのキャラクター設定がしっかりとなされています。 85b558cd21f8a63fc8b1d98a3c98fd78 s

アイコンデザイン、話し方や語尾、雑談の内容などは社内に馴染む設定にしておくと親近感が増し、より使われるチャットボットになります。多くの導入成功企業では、基本的には女性的なキャラクターや擬人化された動物や食べ物など、柔らかい印象を与えるかわいいキャラクターが採用されています。男性的で雄雄しさのあるアイコンを使う企業では多くの場合、笑いの要素を会話データに盛り込んでいます。社内共通の笑いを誘う“内輪のノリ”のようなものをボットの雑談や挨拶に仕込み、親近感を演出しています。 他に業務以外のことを会話データに投入しておくことも親近感の演出に繫がります。挨拶ができる、趣味などの雑談ができる、社長や名物社員の情報を知っている、近くのランチスポットを教えてくれる、社史や最近の社内のホットトピックを教えてくれるなど、ちょっとした意外性のある会話が、社内での共通の話題となり、社内コミュニケーションの活性化に一役買うこともよくあります。