チャットボットは導入目的を明確に。機能やメリット・デメリットを比較
チャットボットの機能はサービスによってさまざまです。導入しても問い合わせの課題が全て解決できるとは限りません。サービスの選定に当たっては、導入目的を明確にすることが大切です。チャットボットの機能やメリット・デメリットを解説します。
なぜチャットボットを導入するのか
チャットボットを導入する企業は増えていますが、問い合わせの課題を全て解決できるほど万能ではありません。導入効果を最大化するために、まずはチャットボットとは何かを整理・把握するところから始めましょう。
チャットボットの基本的機能
チャットボットとは、質問者とチャット画面で対話を行い、質問に対して自動応答するロボット(プログラム)です。
Webサイト内のチャット画面や、LINEやFacebook Messengerといったチャットツールと連携し、オペレーターのように振る舞います。チャットボットの大きな分類は、「ルールベース型(シナリオ型)」と「AI型(機械学習型)」の2つです。
ルールベース型は、シナリオ設計通りに質問者を回答へ導きます。事前に対話のツリー構造を設計し、質問者に選択肢を提示して結論へ誘導する仕組みです。
AI(人工知能)を搭載した「AIチャットボット(AI型)」は、文章の構造・意味を理解したり質問の意図を推論したりすることで、フリーテキストにも柔軟に対応できます。
事前に問い合わせ内容の教師データを学習し、運用中に得られるデータからも学習することで回答精度を高めていく仕組みです。
メリットや効果を整理しよう
チャットボットはサービスによって機能に違いがあり、運用目的に対して向き不向きがあります。チャットボットに期待する効果を明確にし、目的に合ったサービスを選択することが大切です。
例えば、見積もりまで自動化できるチャットボットなら、オペレーターの工数を大幅に削減できます。回答精度が高いチャットボットなら、素早く的確な回答を示せるので、顧客満足度の向上につながるでしょう。
チャットボットで製品・サービスの説明を補足できれば、見込み顧客の理解度を高め、ブランディングの成功やCVR(コンバージョン率)の改善が期待できます。
チャットボットに期待される主な役割
自社が抱える課題によって、チャットボットに求める機能や役割は異なります。何を目的として導入するかを明らかにすることで、適切なサービス選定や運用方法が検討できるでしょう。チャットボットの主な役割を解説します。
24時間稼働し、機会損失を防ぐ
夜間や休日に商品・サービスについて問い合わせをしたい顧客も多いでしょう。その時間帯にオペレーターが対応できなければ、機会の損失を生みます。
とはいえ、夜間や休日に有人窓口を稼働させるためにコストがかさむのはネックです。ここで、チャットボットのシステムさえ稼働させておけば、顧客は夜間でも休日でもスマートフォン一つで気軽に問い合わせができます。
最小限のコストで顧客との接点を増やし、24時間365日スピーディーかつ均質な顧客対応ができることは大きなメリットです。
顧客満足度の向上
電話やメールによる問い合わせは、オペレーターの配置数や稼働時間により、対応のスピードが変化します。電話はつながらなかったり保留時間が長かったりするケースも多く、メールは返信まで待たせてしまうのがデメリットです。
チャットボットは、一つのシステムを稼働させるだけで同時に多人数への対応ができます。即座に回答するため待ち時間もありません。顧客からすれば相手はプログラムなので、対人ストレスがないのもメリットでしょう。
さらに、対話の内容は文字情報で残るので、顧客は回答を簡単に読み返せます。いつでも何度でも気軽に質問して回答を得られることで、顧客満足度の向上が期待できます。
顧客の声を拾い可視化できる
チャットボットは気軽に質問できるうえ24時間365日顧客対応ができるので、問い合わせの数が増えます。データ量が増えることで顧客の潜在的な要望を拾いやすくなるという点も、メリットの一つです。
また、チャットボットによる顧客対応の履歴は自動的に保存されます。オペレーターが履歴を手入力する必要がなく、顧客の声を逃すことがありません。
運用するほど客観的なデータが蓄積されていくので、長期的なデータ分析にも役立つでしょう。今まで把握していなかった顧客のニーズを知ることが、商品やサービスの改善につながります。
テレワーク促進や従業員の負担軽減
働き方改革や新型コロナウイルスの影響もあり、テレワークを推進する企業は増えていますが、チャットボットを社内からの問い合わせに活用することもできます。
テレワークを導入すると、対人コミュニケーションの機会が減り職場内の情報共有が困難になることで、社内での問い合わせ件数が増えるというデメリットが生じます。
チャットボットを導入すれば、簡単な質問は自動対応して、オペレーターは有人対応が必要な問い合わせにだけ集中できます。質問者・オペレーター双方の業務効率化につながるので、テレワークがよりスムーズになるでしょう。
チャットボット導入のデメリットも把握しよう
チャットボットはさまざまな問い合わせ問題のソリューションとなり得ます。しかし、プログラムである以上、代理できる問い合わせに限界があることには注意が必要です。
質問や回答のデータを適切に与え、回答精度を調整していく作業も必要になります。チャットボットのデメリットも把握しておきましょう。
難解な質問には答えられない
チャットボットはチャット画面上でテキストによる応答を行うので、人間のような思考能力によって回答しているように見えます。
しかし、ルールベース型のチャットボットは、設計した質問と回答のパターン通りにしか対応できません。言語認識能力に優れたAIチャットボットでも、質問から想定される回答を学習していなければ適切に回答することは不可能です。
人間なら意味を理解できる文章でも、プログラムの言語認識能力を超えて複雑・あいまいな文章だと、正しく意図を推測できないことは頭に入れておきましょう。
事前準備やチューニングが不可欠
チャットボットは、シナリオ設計や機械学習によって質問と回答のパターンをデータベース化します。
運用前の準備として、ルールベース型ではシナリオ設計が不可欠です。AIチャットボットなら大量の教師データを用意して学習させる必要があります。
しかし、十分な事前準備を行っても、想定より回答精度が低いケースもあります。そのまま運用を続けると顧客や社員の不満が大きくなり、オペレーターに問い合わせが回ってしまうでしょう。
運用中は質問・回答の分析やデータベースのチューニングを行って、回答精度を高めることが大切です。チャットボットが十分な性能を発揮するまでには、ある程度の時間や手間、コストがかかります。
目的を持ってチャットボットを選ぶ際のポイント
チャットボットの機能で最も注意したいのは、AIを搭載しているかどうかです。この違いによって、目的を達成できるかどうかが大きく変わります。また、運営管理の体制を整えられるかどうかもポイントです。
AIを搭載しているかどうか
ルールベース型のチャットボットは、質問者に選択肢を提示して、対話のシナリオに沿って回答へ導きます。単純な質問には回答できますが、対応できる問い合わせは限定的です。
AIチャットボットなら、あいまいな文章からも質問者の意図を推論して「統計的に正解である可能性が高い回答」を示せます。単に回答するだけでなく、商品・サービスの提案まで対応できることもメリットです。
ルールベース型とAI型のハイブリッド型なら、選択肢を提示しつつフリーテキストによる質問にも対応できます。
運用態勢を構築できるかどうか
チャットボットの運用中には、運用データの分析やチューニングといった作業を要します。これらの作業を適切に行わなければ、顧客ニーズの理解やチャットボットの品質向上は望めないでしょう。
チャットボット運用についてPDCAを回していく運用体制の構築が重要です。とはいえ、運用担当者や担当チームを置くと、教育コストや人的コストがかかってしまいます。
サービスベンダーによっては、導入前に運用コンサルを提供していたり、分析・チューニングといった運用管理を代行できたりもします。自社で運用管理が難しい場合、サービスベンダーのノウハウや人的リソースを借りましょう。
まとめ
チャットボットはロボット(プログラム)なので、労働時間や人件費といった概念がありません。自動応答で十分な問い合わせをチャットボットに任せることで、有人対応にかかるコストを大幅に削減できます。
さらに、運用データを分析すれば、顧客ニーズの理解や商品・サービスの改善につなげられます。社内向けに運用すれば、テレワーク推進に効果を発揮することもメリットです。
運用体制の仕組みづくりが困難なら、サービスベンダーのサポートも受けられます。チャットボットに期待する効果を明確にし、目的に合ったサービスを選択しましょう。