チャットボットは使えないツールなのか?課題と目標の設定が大事

「チャットボットは使えない」と感じ、利用を中止している企業もあります。このようなチャットボット導入の失敗には、いくつかの原因があるのです。導入後に後悔しないために、原因と対策を知った上で、自社に必要かどうかを判断しましょう。

チャットボットで失敗する原因

机でノートパソコンを触っている男性

予算と手間を掛けたにもかかわらず、チャットボットの導入に失敗してしまうこともあります。なぜそのようなことが起こるのでしょうか?導入前に、原因を知ることで、失敗を回避しやすくなるでしょう。

AIは万能であると考えてしまうこと

AIは万能でありチャットボットを導入すれば何でもできる、と考えている場合、いざ導入すると使えないと感じることがあります。

導入すれば全てが解決すると考え、チャットボットの運用をAI任せにするようなケースです。AIは学習により回答精度が上がるため、導入後もメンテナンスが欠かせません。

また、チャットボットには得手不得手があります。シンプルなよくある質問への対応は得意ですが、専門性の高い質問や複雑な質問への対応は不得意です。

そのため、問い合わせに関する全てをチャットボットに任せようとすると、失敗してしまいます。自社の現状と照らし合わせ、何をチャットボットに任せるか考えてから導入することが大切です。

的確な答えを返せない場合があること

チャットボットを導入しているからといって、『常に的確な回答ができるわけではない』ということを知っておかなければいけません。

いくら高性能でも、自社の課題解決に向いていないタイプを導入している場合には、機能を生かしきれず無駄になってしまいます。

学習データが極端に少ない場合にも、的確な回答が得られません。特に、追加学習が不十分な導入初期は、問い合わせに対して半分も答えられないということもあります。

このような失敗は、事前準備によってある程度回避可能です。

事前準備に注力しよう

グラフが印刷された紙を見ながらメモする人

使いやすいチャットボットを導入し、効果的に広めるためには、事前準備が欠かせません。自社への導入をスムーズに推進できるよう、必要な準備を進めることが大切です。

導入スケジュールを把握しておく

導入するときには、『約3カ月の実証期間』と『約1~2カ月の運用準備期間』を設けることが一般的です。ただし、この期間には、シナリオ作成にかかる作業の時間は含まれていません。

チャットボットに使用できるくらいに整ったFAQが既にある場合には、上記のスケジュールで導入できるでしょう。
逆に、FAQが整っていない、予想される問い合わせの検討がついていない、という場合には、調査から始めなければならず、その分、準備期間が長く必要です。

専任スタッフのアドバイスを受ける

ITツールに詳しい担当者がいない企業もあるでしょう。その場合、自社だけでチャットボットを導入するのは難しいものです。

そこで、『専任スタッフのアドバイス』が受けられる、サポート体制の充実した提供元を選びます。コンサルタントを受けることで、分からないところを相談しながら進められるため、よりスピーディーな導入も可能です。

ただし、専任スタッフに任せきりでは、自社の体制が整いません。担当者が決まっていない、ガイドラインが作成されていないという状況では、チャットボットのメンテナンスが不十分なままになってしまいます。

回答精度が上がらず使えない、とならないために、サポートを受けながら社内の体制を整えましょう。

満足度を上げるためのポイント

机でパソコンをいじる女性

チャットボットは便利なツールですが、導入しただけでユーザーの満足度を高められるわけではありません。役に立ち喜ばれるサービスとして提供するためには、ポイントがあります。

課題と目標に合ったシナリオ設計

まず大切なのは、チャットボットで何を解決するのかをはっきりさせた上で『シナリオ設計』をすることです。

導入時点で、課題と目標を定めることで、チャットボットにどのような役割を持たせるかがはっきりします。すると、ユーザーの悩み解決に役立つシナリオ設計ができるのです。

作成したシナリオにぴったりの機能を持つチャットボットを選ぶことで、より使いやすいツールとして導入できます。

ユーザーが何に困っていて問い合わせをしたいと思っているのか、という点から考え始めることで、満足度の高いチャットボットにすることが可能です。

必要に応じて有人対応に切り替える

高性能なチャットボットでも、対応しきれない問い合わせはあります。高度な質問にスムーズに対応するためには『有人対応』への切り替えができるようにするとよいでしょう。

チャットボットで回答できない問い合わせをそのままにしてしまうと、企業イメージの低下を招く可能性があります。そこで、有人対応により、複雑で専門性の高い質問にも対応できるようにするのです。

手軽なやり取りができるチャットならではの良さを生かすためには、『有人チャット連携』を利用するとよいでしょう。

ユーザーに魅力を伝えて利用率を上げる

複数人で机にパソコンを開いて円になっている

事前準備により十分なレベルの回答ができるチャットボットになったとしても、利用してもらえなければ役に立てません。
チャットボットの利用のしやすさをうまく伝え、利用率を上げるためには、どのような方法があるのでしょうか?

告知や説明の仕方を考えておく

せっかく導入したチャットボットも、存在を知られなければ使ってもらえません。そこで、まずは告知や周知をすることから始めましょう。

利用する中で学習が進むチャットボットは、初めから大々的に告知するよりは、『段階的に告知』していく方が向いています。 例えば、最初にFAQページへ設置し、お問い合わせページ・申し込みページなどにも広げていき、導線を増やしていくのです。

段階を踏み、精度が十分高まったら、お知らせメールといった方法で広めていくのが一般的といえます。

告知の際には、ユーザーがイメージしやすいように使い方の紹介もしましょう。簡単に使えることが分かれば、利用者の増加が期待できます。

ユーザー体験を意識する

ユーザーがチャットボットを利用したとき、使いやすいシナリオになっているか、という点も考えながら設計しましょう。よくある質問が徐々に変化することもあります。

今、ユーザーに求められている回答ができるよう、随時見直しが必要です。また、チャットボットとのやり取りが自然な対話になるよう設計することもポイントといえます。
1度のやり取りで回答できない質問に「分かりません」と返すと、ユーザーにとってはエラーのように感じられます。

しかし「それは○○や○○に関係していますか?」というように返答をすることで、ユーザーは自然な会話をしていると感じられるでしょう。自然なやり取りに近づけることで、魅力的なチャットボットになります。

データを測定して運用後の見直しに活用

パソコンをいじるスーツを着た男性

導入して終わり、では十分にチャットボットを生かせません。使いやすいチャットボットは育てていくものです。運用後の見直しのために、測定したデータを利用しましょう。

分かりやすい返答ができているか

自動返信やシナリオがどのくらい利用されたのかを計測したのが『自動応対件数』です。この数値を見ることで、チャットボットがどれくらい正しく返答できているかを判断できます。

思うような件数に達していない場合には、シナリオを改善しましょう。深過ぎる階層や複雑過ぎる分岐をシンプルにして使いやすくすることや、自然に回答へ導けるシナリオの流れを作るのです。

疑問を解決できているか

チャットボットでユーザーの疑問が解消されているかどうかを知るためには、『回答率』や『解決率』が役立ちます。

回答率はチャットボットが返答できた割合で、解決率はユーザーに役立ったかどうかを判断するのに役立つ指標です。

また、チャットボットを資料請求や申し込みにつなげる目的に導入している場合には、『チャットボット経由のCV数』もチェックしましょう。

まとめ

チャットボットを導入しても、「うまく活用できない」という理由で利用しなくなる企業があります。そのような企業に共通するのは、チャットボットさえ導入すれば全ての問い合わせに対応できる、と考えている点です。

使えるチャットボットにするためには、導入前の準備はもちろん、導入後の学習も欠かせません。新人教育と同じように、手間をかけて育てなければいけないのです。

また、ユーザーがどのような質問を解消したいと考えているかも大切なポイントといえます。測定している数値も参考にしながら、メンテナンスや改善を続けることで、役立つチャットボットにしていくことができます。