チャットボットを導入するメリットとは?活用例や基本知識を解説
近年、AIやIoT技術の発達によって業務に関わるさまざまなタスクが自動化されています。その中でも注目を集めているのが『チャットボット』です。チャットボットの仕組みや導入するメリットについて学び、自社でチャットボットを導入する上での判断材料にしてみてください。
チャットボットって?その歴史とは
『チャットボット』という言葉を聞いたことはあるでしょうか?インターネット上では、ユーザーを相手にチャットボットを用いて対応する企業が増えています。
チャットボットを導入することで、さまざまな費用対効果が得られるといいますが、そもそもチャットボットとは何でしょうか?まずはチャットボットの定義や、なぜここまで普及するに至ったか、歴史について触れていきましょう。
自動的に対応するロボットのこと
チャットボットは、『チャット』と『ロボット』という二つの言葉を組み合わせた造語です。チャットを、人ではなくロボットが自動で対応してくれるプログラムのことを指します。
楽天などのショッピングサイトで、「チャットで質問」などと表示された項目に問い合わせると、機械的な選択肢が自動的に提示された経験はないでしょうか?あの仕組みが、チャットボットの代表的な例です。
他にも、ホテルやタクシーの予約など、さまざまな場面でチャットボットが利用されています。
チャットボットを使うと、人と会話しているような気軽さで、たどり着きたい答えをスピーディに知ることができるという便利さがあります。
これまでの発展の過程
チャットボットが登場したのは、半世紀も前だといわれています。マサチューセッツ工科大学で名誉教授を務めていたジョセフ・ワイゼンバウム氏が1966年に公表したELIZA(イライザ)は、入力したテキストに対して自動で回答する簡易的なチャットボットです。
その後は、マイクロソフト社が日本語版のオフィスソフトにチャットボット機能を搭載するなどしています。イルカをモチーフにしたサポートキャラクター『カイル』も、チャットボットの一種です。
そして現在では、iPhoneなどに導入されている『Siri』が音声に対して回答できるようになっているように、チャットボットはさらなる進化を遂げています。
将来的にチャットボットは私たちの生活に、さらに深くまで入り込んでくることが予想されます。
チャットボットの種類と導入事例
チャットボットにもいくつかの種類があります。どのような種類を導入するのが自社にとって最適であるかを検証するためにも、導入事例とともにチャットボットの種類を見ていきましょう。
シナリオに沿って回答 ルールベース型
『ルールベース型』のチャットボットとは、あらかじめ決められたルール(プログラム)に則って回答を行う種類のチャットボットです。
シンプルに設計できるので開発費用が比較的安く、すぐに導入できるというメリットがありますが、あらかじめ決められた言葉以外には対応できないというデメリットがあります。
そのため簡単な質問に対してはルールベース型で対応できますが、難しい内容の質問や、レアケースの質問など、ルールベース型で対応しきれない場合には、途中からオペレーターに中継するなどのシステムが必要です。
ビッグデータを元に回答 機械学習型
一方『機械学習型』とは、膨大なデータである「ビッグデータ」などを元にして自動で学習し、最適な回答を探し出す成長性を持ち合わせたチャットボットのことです。利用者が増えてデータが蓄積されるほど、自然な会話が行えるようになります。
複雑な問い合わせにも対応できるようになるためオペレーターが不要になり、人的コストが削減できるといったメリットはありますが、一方で正しい回答をまとめたデータベースを用意したり、定期的なチューニングを行ったりなど、運用自体に手間がかかることがあります。
導入事例や活用方法
ルールベース型と機械学習型の導入事例を一つずつ紹介します。
ルールベース型で有名なのは、楽天のチャットボットでしょう。楽天のホームページから質問フォームに飛ぶと、そのまま自動チャットが始まります。質問の内容やユーザーの要求に合わせた対応をするチャットボットです。
オペレーターを減らすことによる人件費の削減や、24時間対応による機会損失の防止などのメリットがあります。
一方、機械学習型のチャットボットを自治体が導入した例もあります。岡山県和気町の「わけまろくん」です。
移住希望者の幅広い質問に対応するために導入したこの「わけまろくん」のチャットボットによって職員の負担は大幅に減り、運用開始後の1カ月目にして約5,000件もの問い合わせに対応できたといいます。
このように、自治体や大手企業をはじめ、チャットボットは生活のさまざまな場面に入り込み、有効活用されているのです。
企業が導入することのメリットとは?
チャットボットを企業が導入することで、どのようなメリットがあるのでしょうか?顧客満足度の向上や人件費の削減といったメリットと、それらが実現できる理由について詳しく見ていきましょう。
顧客満足度、CV率の向上を狙える
チャットボットのメリットの一つに、「顧客満足度の向上」があります。なぜチャットボットを導入することで顧客満足度が向上するのでしょうか?その理由として、主に次の2点が挙げられます。
対応時間を拡大できる 回答精度が向上する
有人オペレーターの場合、深夜や休日の回答は難しいですが、チャットボットであれば24時間回答することが可能です。
さらに有人オペレーターの場合、対応するスタッフによって回答が異なってしまう場合がありますが、チャットボットであれば、同じ質問に対する回答を統一することができます。
チャットボットは、サイト上に常駐している店舗スタッフのようなものです。ユーザーが購入を検討しようとしている商品やサービスについて、チャットボットですぐに尋ねることができるので、商品やサービスへの理解が深まり、CV率向上にもつながります。
人的コスト削減、業務効率化
チャットボットがカスタマーサポートなどでよく使われる理由としては、人的コストの削減があげられます。単純な質問や対応であればルールベース型のチャットボットで十分対応できますので、ユーザーの利便性を損なうことなく、人件費を削減することが可能です。
オペレーターを人が担当する場合、教育コストがかかるだけでなく、内部情報が外に漏れないようにセキュリティ対策をするコストも必要ですが、チャットボットであればこれらのコストを削減できます。
また、オペレーターが単純な回答をする業務に時間を取られてしまうという非効率な状況を減らし、より複雑な業務に集中できるようになるといった業務効率化にも役立ちます。
社内向けのチャットボットを設置すれば、他の部署や専任外の業務に関する質問もチャットボットが答えてくれるようになるため、社員が本来の業務に集中できる環境を整えることもできるのです。
ユーザーのメリットとは?
チャットボットを導入することで「顧客満足度の向上」が見込めることは先述したとおりです。ユーザー視点でどのようなメリットがあり、それがいかに満足度につながるのかを掘り下げていきましょう。
気軽に質問でき、待たされない
ユーザーの中には「こんな簡単なことをわざわざ尋ねても良いものか」と気後れしてしまう人がいます。また、問い合わせフォームを使う場合には個人情報を入力する必要がありますが、チャットボットであれば不要です。
さらに有人であれば混雑時に待たされるようなケースもありますが、チャットボットは機械が回答するため、即座に対応できます。そのため、待たされることを心配することなく、ユーザーは気軽に質問でき、満足度の向上につながるのです。
解決したい内容にたどり着きやすい
有人オペレーターに質問する場合、質問に対して的確な回答を得られるかどうかはオペレーターの技術や経験にも依存します。しかしチャットボットであれば、回答を絞り込んだり、質問を深掘りしたりすることで、精度の高い的確な回答が行えるようになるのです。
特に、機械学習による膨大なデータを元にしたチャットボットは、人が行うよりはるかに高い精度で回答してくれることにも期待が持てます。
導入前に知っておきたいこと
チャットボットを企業で導入する前に、次の点について押さえておきましょう。より的確なチャットボットの運用が可能になるはずです。
目的を明確にしておこう
チャットボットを導入する目的について、あらかじめ明確化しておくことが重要です。チャットボットにもさまざまなタイプがありますので、エンジニアが設計する上で要件を決定しやすくなります。
チャットボットを導入する目的として、次のようなものが考えられます。
コスト削減 顧客満足度の向上 ブランディング CV率の向上
これらのうち、どの目的に要点を置くのかを決めておけば、チャットボットの種類も決定しやすくなり、導入もしやすくなるのです。
運用体制の構築などの事前準備が必要
導入にあたっては、運用体制の構築をはじめとした事前準備が必要です。
例えば、LINEやTwitterなどのSNSで運用するのか、それとも自社サイトで運用するのかといったプラットフォームの決定や、オペレーターにどの段階から接続するのかといった運用体制の構築、責任者の決定、FAQの用意など、あらかじめ準備しておくことは多くあります。
準備が不十分なまま、いきなりチャットボットを導入したところで、かえって効率が悪くなったり、現場に混乱を招いたりすることがあるので注意しましょう。
まとめ
チャットボットを導入することで人件費の削減や業務効率化などのさまざまなメリットが得られるため、チャットボットを導入する企業は多くあります。
ユーザー側にとっても、気軽に質問できる、待たされないといったメリットがあり、CV率や満足度の向上につながります。これを機にチャットボットを導入してみてはいかがでしょうか?
ただしその際には、導入目的を明確にし、運用体制の構築などの事前準備をきちんと行うことが重要です。チャットボットは、適切に導入することで、ユーザーと企業の距離を縮めるための架け橋になってくれる可能性を秘めているのです。