実用的なチャットボットを開発する秘訣とは?過去の導入失敗事例から学ぶ
昨今、業界を問わず様々な企業がチャットボットを導入しています。チャットボットがもたらすメリットは様々あり、省人化やコストカットなどを実現した様々な事例が報告されています。
ですが一方で、チャットボットを導入してみたものの、期待していたような効果を得られなかったケースもあります。原因はおもに、AI(人工知能)に対して過度な期待をし過ぎたこと、もしくはユーザーのニーズを捉えきれなかったことなど様々です。
現在、チャットボットの導入を検討中、もしくは運営中の企業の方などにとっては、成功事例だけでなく失敗事例からも学ぶことで、より実用的で効果的なチャットボットの設計運営に活かせると思います。
そこで今回は、実際のチャットボット導入失敗事例をいくつか参考にしながら、効果的なチャットボット設計に必要な要素について考えてみましょう。
事例その1:ユーザーのニーズに合わない場合
チャットボットの活用が進んでいる分野の一つに、社内ヘルプデスクが挙げられます。従来は人間のオペレーターが行っていた業務ですが、人手のみでは属人化や業務効率の低下などの課題があり、チャットボットによるコスト削減などのメリットを享受しやすい分野と言われています。
ある通信企業を例にとると、同社は社内の営業担当向けのチャットボットを開発し、アプリ経由で話しかけるだけで商談用の情報を検索したり、社内手続きの簡略化などを行えるサービスを開発しました。設計にあたり、社員から20,000件以上もの意見を集めて、社内データベースの取引先企業情報やノウハウといった、大量のデータを基にシステムを構築しました。
ところが、いざ導入してから3カ月後には、同アプリを使う社員は殆どおらず、開発担当者は大きなショックを受けたといいます。原因を分析した結果、「AI(人工知能)のメリットばかりに注目し、実際にそれを使うユーザー(営業担当者)が何に困っているのかをきちんと把握していなかった」と述べています。
大量のデータを集めたにも関わらず、社員からの意見を十分に吟味しないまま開発を行ってしまい、実際に搭載された機能の大半は現場の社員が求めていたものではなかったとのことです。チャットボットの開発時には、まずユーザーの求める機能の洗い出しを優先的に行う必要があります。
事例その2:AIの「すごさ」を優先したケース
また、別の企業でも社内ヘルプデスクにチャットボットを導入し、部署と部門間の問い合わせを自動化することで、管理部門の業務負担を軽減することを期待していました。
ですが、サービス導入後から1年後にはチャットボットを利用する社員は殆どおらず、サービスは廃止になっています。原因は、チャットボットに使用していた自然言語処理技術が十分に実用的でなかったことも挙げられますが、開発担当者は「AI(人工知能)に対して過剰な期待を抱いていた」と述べています。
昨今のブームもあり、AI(人工知能)というと「なんかすごそう!」という印象を抱きがちです。しかし、ただ「すごい!」と感じられるシステムを構築することと、それが実用的であることとの関連性は必ずしも一致しないということが、この事例から読み取れます。
AI(人工知能)を導入する際、それが社内のどんな部門で活用できて、具体的にどんな課題を解決できるかを、先ずはしっかりと議論する必要があります。
事例その3:AIで何が出来るかを、よく分からないまま導入したケース
また、最近では様々なイベントやセッションでAI(人工知能)の重要性が説かれており、つい「とにかくAI(人工知能)を使わないと時流に遅れる!」という焦燥感を抱く方もいると思います。ですが、具体的にどんな課題を解決できるかを把握しないまま導入を進めてしまうと、かえって時間やコストを浪費するだけで終わってしまうケースがあります。
ある中小企業では、AI(人工知能)関連のセッションに参加した経営者が、早速自社のIT部門に、AI(人工知能)を用いて業務効率の改善を行うように指示しました。ですが、具体的に解決すべき課題や、AI(人工知能)を活用できる分野が設定されていなかったため、IT部門の担当者は頭を抱えてしまったといいます。
IT部門担当者もAI(人工知能)に関する知識が乏しかったため、AI(人工知能)開発を行う外部のベンダー企業に相談します。ですが、具体的にAI(人工知能)をどう活用したいのかが白紙のままだったので、ベンダー側も具体的な解決策を提示しようがなかったとのことです。
こうした事例からは、AI(人工知能)を導入することが必ずしもメリットをもたらす訳ではなく、まずは自社が抱える課題を把握し、必要に応じてAI(人工知能)導入を検討すべきであることが分かります。
まとめ
上記でご紹介した3つの事例から見て取れるのは、AI(人工知能)は目的ではなくツールであり、手段と目的をはき違えたことによって十分なメリットを得られなかったケースが多いということです。
また、こうした事例に共通しているのは、往々にしてAI(人工知能)のメリットや、巷での風聞に影響され、社内で十分な議論を行わないまま開発に踏み切ってしまったことが挙げられます。
AI(人工知能)を真に活用するためには、まず現在のAI(人工知能)で何が出来るかを把握し、その上で自社のどの分野にAI(人工知能)が活用できるかを、設計段階で具体的な青写真を描く必要があります。
その上で、様々な成功事例や失敗事例から得られる教訓を参考にして、より実用的なチャットボットに必要な要素とは何かを、しっかりと洗い出す必要があります。
参考リンク
https://saichat.jp/chatbot/example/ https://www.itmedia.co.jp/news/articles/1708/07/news009.html https://qiita.com/kakkiichan/items/f3c580518b674ab80747 https://www.softbank.jp/biz/future_stride/entry/ai/20190401/