失敗から学ぶ。AIチャットボットの社内問合せ用導入、3つの盲点

AIチャットボット元年と言われる2016年を皮切りに、今、人工知能チャットボットを社内問い合わせ対応用に検討する企業が増えています。
大手企業はもちろん、従業員規模が数百名の中小企業においても、社内ヘルプデスクや情報システム部門、総務人事部門の負荷を減らすことができるツールであると評価が高まっています。

一方で、社内で導入したが、定着せず、誰にも使ってもらえないまま運用を打ち切ったという声もちらほらと耳にするのも事実です。

「AIチャットボットの導入を検討しているが、本当にうまくいくのか心配・・・。」

「ちゃんと従業員は使ってくれるだろうか?」

そんな不安や疑問をお持ちではないですか?

これまでにAIチャットボットを社内導入し、今なおコンスタントに毎月オペレーション工数や人件費削減が出来ている企業と、導入わずか1ヶ月でほぼ誰も使わなくなり、利用推進にあれこれと手を打ったがやはり3ヶ月で運用打ち切りとなった企業とでは、一体どのような違いがあるのでしょうか?

今回は、AIチャットボット導入に際する、企業担当者が見落としがちな 以下の「3つの盲点」、

①社員のAIへの過剰な期待 ②単独部署での導入推進 ③使いたくなる工夫のないボット

について、述べていきます。

社員のAIへの過剰な期待はあなたの会社にも潜む危険信号

データを作り込めば作り込むほど、担当者のチャットボット活躍への期待は高まります。
しかしながら、現段階でのAIチャットボットの質問対応範囲には限界があることは周知の事実であり、人間と全く同じレベルで応答をすることはほぼ不可能です。
社内問い合わせ対応であれば、あくまで、大量に来る1次問い合わせレベルの質問をさばくことに役割を求めるべきです。例えば、「パソコンが壊れたがどうすればいい?」や「経費申請書の提出方法を教えてほしい」など、あらゆる部署から大量に来る似たような質問をイメージしてもらえるとわかりやすいかと思います。

しかしながら、一般的な認識は、昨今の人工知能に関するマスコミの報道などから「人工知能なら何でもできる」というイメージが先行しています。
実際社内にいる自社社員もまた一般的な認識でいることは当然で、特別に技術に詳しい人でない限り、このようなAI万能説を無意識のうちに信じています。

人は事実よりも、こうあってほしいというものを信じる傾向にあるため、過渡な期待につながってしまうのです。
したがって、チャットボットを試験運用し育ててきた担当者と、社内公開直前のまだ何も知らない社員のAIへの期待値には、この時点でかなりの乖離があることが多くあります。

このような状況下では、チャットボット公開後のエンドユーザー(社員)のユーザー体験は思わしくない方向へと転がり落ちていきます。
重要なことは、社員のAIチャットボットに対する期待値のコントロールを上手にしていくということです。
今回社内で使い始めたAIチャットボットはどこまで的確に回答できて、どういったことは答えられないか、その線引きを事前に社内アナウンスしておくことが極めて重要なのです。

線引きとは言うものの、明確なものでなくとも問題ありません。例えば「このような粒度で質問をしてほしい」「こういう情報を探す時は一度チャットボットに聞いてみてほしい」というような、大まかなガイドラインを示すだけでも、充分にソフトランディングできます。

絶対に避けなければいけないことは、「何を聞いても正確に回答してくれる」という根拠のない期待が社内に高まっている状況です。

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単独部署だけで進めるチャットボット導入は大企業であるほど要注意

AIチャットボットの導入は利用範囲にもよりますが、最終的に全社利用を目指す場合は、部門を超えた社内横断プロジェクトとして捉える必要があります。

よくある失敗に、単独部署(最も多いのが情報システム部門)の担当者だけでボットを育て、そのまま全社へ利用を呼びかけるケースです。
情報システム部門の担当者はITリテラシーが高く、平均的な部門の社員目線に合わないQAを作ってしまいがちで、先述のエンドユーザーの期待値の調整がうまくできていないことが往々にしてあります。
そのため社内公開後、チャットボットには想定外の質問が殺到します。

ボット管理者は本業との兼任で忙しいこともあり、ボットのメンテナンス作業へのモチベーションが急激に下がってしまいます。
その結果、ボット管理が手薄になったことで、さらなる正答率の低下につながったという失敗があるのです。

注意すべきポイントは、自部門だけでうまくやろうとせず、社内横断プロジェクトとして予め他部門との連携をとっておくことです。
QA作りの段階から他部門への呼び掛けができるのであれば、QAデータの収集段階くらいは各部門1~2名程度の担当者をアサインし、彼らに行ってもらうことをおススメします。その後QAデータを統合し、公開することでこのような事態を防ぐことができます。

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業務的で無機質な会話しかできないチャットボットでは損をする

そして、最後の盲点は、「使いたい」と思ってもらえる工夫がチャットボットに施されているかということです。
ちゃんとした便利なツールさえ導入すれば、皆が使ってくれるという発想は安易です。
むしろ適切なツールを用意できただけでは50点です。しっかりとしたシステムを選び、それを使いたくなる工夫を自社努力で施すことで、はじめて100点満点と言えます。

「使いたくなる工夫」とは一体何でしょうか?
例えば、社員のひととなり情報をデータに入れておき、ボットを介して他部門の社員のことを知れたり、ボット自体の性格やアイコン、語尾に統一したコンセプトを与えたり、裏コマンドのようなセリフを仕込んでおくなど、チャットボットを通して、社内コミュニケーションが活性化する仕掛けのことです。
ひと手間かけてでも、このような工夫を作っておくことが、想像以上の効果を発揮します。

しかしながら、こういった‘ネタ’を仕込んでおくことは、どうしても定性的な取り組みとなるため、決して社内で合意の得安いものではないかもしれません。
ただ、これまでチャットボットの社内導入を成功させてきた企業を見れば、こういった工夫がよく見受けられてきたことも事実です。ボットを定着させ安定的に稼動させるために大変重要なことなのです。

なぜコンシューマ向けの商品やサービスは使う前には、「使いたい!」「ほしい!」と思わせる仕掛けやトリックをたくさん施すのに、社内向けのサービス(ツール)になると、そのような努力がなされないのでしょうか?

社内ツールのユーザーもまた人間であり、利用に対するエンドユーザーのモチベーションは、できるだけ高くなるよう仕掛ける側の努力も必要なのです。

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これさえ押さえればチャットボット導入は誰でも簡単にできる

チャットボットの社内導入における「3つの盲点」として、

①社員のAIへの過剰な期待 ②単独部署での導入推進 ③使いたくなる工夫のないボット

を紹介してきました。

逆に言えば、これら3つの盲点さえ押さえておけば、多くの場合、チャットボットの社内導入は成功に繫がると考えます。

全社共通で利用されるシステムであるからこそ、大きなミスは許されません。
果たして、チャットボットがそもそものソリューションになり得るのか、なり得るとすれば、自社の課題解決に最適なチャットボットはどんなものか、そして導入決定後はどのようなことに注意すればよいのか、と言った疑問が多数出てくることでしょう。

そこで、当メディアでは、チャットボット導入におけるソリューション検討時、ツール比較検討時、導入決定時において、それぞれの段階で間違った判断を下さないための確認すべき100のチェックリストを用意しました。

チャットボットの社内導入の際に、このチェックリストを活用すれば、より的確な視点で導入プロセスを評価することができます。
以下の「無料資料ダウンロードフォーム」からダウンロードできるので、是非ご活用下さい。