AIチャットボットを社内導入するための7つステップ

AIチャットボットを社内問合せ用に導入する企業には、大企業だけではなく、急成長し、新入社員が毎月入ってくるようなベンチャー企業も多く存在します。社員が数百名から1000名規模に拡大する企業では、社員が増えるにつれ、新しい業務ルールや書類・フォーマットが作られ、社内規定が日々更新されていきます。その都度、オリエンテーションを開き、新ルールを周知するものの、伝えられる側の社員としては、いざその問題に直面してみないと覚えていないものです。結局、オリエンテーションを開いたところで「たしか、そんなルールあったかもね」程度に終わってしまい、社内問合せは増える一方です。新しく作られたルールが、いざ社員自身の手元で必要となり、「どうやるんだったっけ?」となった時、社内問い合わせAIチャットボットは大いに活躍してくれます。 a4ca245a102f54d0a6c9c2cb6265f026 s

AIチャットボット導入のための7つのステップ

社内問い合わせ対応用にAIチャットボットを活用する企業は、どれくらいの期間で、どのように導入し、どうやって社内で定着させているのか、導入決定後から実際に社内リリースするまでの工程を7つのステップにまとめました。

  1. チャットボットに対応させたい質問範囲を決める
  2. 導入プロジェクト担当、あるいはチームを立てる
  3. 導入スケジュールを立てる
  4. 質問対応範囲で現在発生しているQAを収集する
  5. 収集したQAを会話データ化する
  6. 会話データをチャットボットに投入しテスト運用をする
  7. チャットボットの状態に合わせ、適切な社内周知をする

どこまでチャットボットに質問対応を任せるかで導入計画は変わる

ひとつずつ説明していきます。まず1つ目のステップとして、チャットボットに任せたい質問対応範囲を決めます。あなたが情報システム部門の担当者であり、日々の質問対応業務を減らしたいということであれば、情報システム部門に寄せられる問合せのみが質問対応範囲となります。また、まずは情報システム部門に来る質問にのみ応答させ、うまく行けば、他部門へ横展開し、最終的には全社的に応対できるようにしたいという場合もあります。この場合は、全社展開を念頭に会話データを作成していくことになるため、仮でも良いので具体的にチャットボットがカバーする質問範囲を決めておくことをおススメします。

続いてステップ2では、チャットボット導入プロジェクト担当を決めます。社員数規模にもよりますが、ここでは、1000名以下のベンチャー企業という設定でお話したいと思います。この場合、プロジェクト担当として、リーダーが1名、他サポートに1~2名程度で充分です。チャットボットにどこまでの範囲で質問対応を任せるかによりますが、例えば、社内の情報システム部門に寄せられる質問だけに対応すれば充分ということであれば、担当者ひとりで導入を進める場合もあります。社内のどんな質問にも答えられるチャットボットを作りたい場合は、各部門(人事部、総務部、営業企画部、経理部など)から1名ずつ協力をあおぎ、プロジェクトチームとして計画を遂行していくことが適切です。その場合の選抜のポイントは、各部門で影響力のある人や意見が通りやすい人、周囲から協力を得やすい人を選ぶとプロジェクトはよりスムーズに進みます。 2f87a5677b01ca7597c3d65bf795e431 s

3つ目のステップとして、導入計画を立てます。もちろんステップ4~7に関するスケジュールとなります。それぞれの工程では、概ね1ヶ月程度をかける企業が多く、その程度のスピード感でやる企業が導入に成功している傾向にあります。

QA収集にはシンプルなメモで短期的に記録をとる

続いて4番目にやるべきことは、チャットボットに任せたい質問対応範囲で現在既に発生しているQAを収集することです。例えば、人事部門に寄せられる質問にすべて答えられるようにしたい場合、人事部門が受けるよくある社内問い合わせを抽出する必要があります。抽出方法はさまざまですが、既にメールやチャットで受け付けている場合は、それをエクセル等でまずは一問一答形式にまとめていきましょう。ほとんどが電話による質問の場合、受け付けるメンバーの電話機の横に定型のメモ用紙を準備し、そこに何に関する問い合わせが、どのような聴き方で寄せられ、どのような回答をしたかを、毎回記録として残しておきます。記録期間は1ヶ月もすれば、相当な量が集まり、同じような内容を残すメモも増えてきます。この定型のメモ用紙については、本コラムの最後でダウンロードできますので、是非ご活用下さい。

次に、抽出したQAデータを会話データ化していく作業です。ここでは、一問一答だけでは表現し切れなかった会話を分岐構造により、より会話らしくしていきます。また会話データを作る際に気をつけるべきポイントはいくつかあります。例えば、Qは肯定文で表現すること、接続詞は使わず短文で表現すること、何階層かの分岐構造として人間と会話しているような演出にすること等、最低限の作成のコツを把握しておく必要があります。またこの工程から、複数人で手分けして会話データを作成していくこともあります。その際は、作成に関するチーム内ルールを設けると各メンバーが自走して作業を進めることができ、より短期間で質の高い会話データを完成させることができます。 51b58342cc34c5dddf90c612c14efbf9 s

社内関係者だけでテスト運用をする際のコツとは?

6番目のステップです。会話データが作成できれば、早速AIチャットボットに投入し、関係者だけでクローズドテストを行います。クローズドテストでは、現状でチャットボットがどの程度、質問対応範囲に対して応答可能かを調べることを目的とします。ですので、可能であれば、関係者の所属する部署で、会話データ作りに参加していない新たなメンバーを1~2名アサインするとより効果的です。会話データを作った人は、どのようなQAが仕込まれているか知っているため、想定外の質問が出にくく、正確な判断ができないことがあります。クローズドテストで新たなメンバーを入れると、必ず新しい発見があり、改善の方向性が見えてきますのでおススメ致します。

最後のステップでは、チャットボットの状態に合わせながら、いよいよ社内周知していきましょう。チャットボットの状態とは、何に答えることができて、何が答えることができないかということをです。それをプロジェクトメンバーが把握していることは当然ですが、エンドユーザー(他の全社員)は全く知りません。特に昨今のマスコミ報道などによりAIへの期待感が高い社員もたくさんいます。「AIなら何でも答えてくれるだろう」と本気で思っている社員もいます。このような過剰な期待があると、社内公開した瞬間に、AIの力量を試すかのようにイタズラな質問が多数寄せられ、それに答えられず「なんだ、使えないな」と思われ、導入プロジェクトが危機にさらされかねません。肝心なことは、どこまで回答できるのか、どこまで期待していいのか、ということです。挨拶や雑談はできるのか?人事部のことには何でも答えられるのか?パソコンやネットまわりの不具合など、情シス系の質問にまで対応しているのか、各種申請書類の在り処は教えてくれるのか、社長や役員のいじりネタは乗ってきてくれるのか、会社の近くの美味しいランチ情報は教えてくれるのか、どの程度の会話や回答ができるのかをエンドユーザーには丁寧に周知していきます。 また一気に全社公開せず、一部の部署から段階的に公開範囲を広げていくことも有効です。どれだけ会話データを完璧に作ったと思っていても、必ず想定外の質問は来ます。想定外の質問があまりにも多すぎるということは、逆にいうと、エンドユーザーには「使えない」印象を与えてしまうため、徐々にエンドユーザーを増やしていくことは賢明なやり方です。また、想定外の質問が溜まりすぎるとプロジェクトメンバーも新たなQA登録に急かされ疲弊しかねません。 e0ca92044ce7dc057f888c577e8a8cf1 s

以上がAIチャットボットを社内導入するまでの7つのステップとなります。導入を検討する担当者にとっては、まず大きな作業となるのが4番目ののQA収集作業です。特に社内問い合わせは、内線電話で受けることも多く、テキストデータとして蓄積されていることは少ないでしょう。そこで、本コラムでは、これからQAを収集される担当者にとって、最もシンプルでプロジェクトメンバーにも理解を得やすい方法として、定型化されたメモ用紙を用意することをお伝えしました。いつ、どこの、誰が、どの部門に関するどんな質問をどのような聴き方で質問してきたか、そしてそれに対してどのように回答したかを1枚の小さな紙に蓄積していく簡易メモ用紙です。これを毎回、内線電話で問い合わせが来る度に、記録として残していきます。記録期間は1ヶ月です。それ以上続けても、さほど成果は変わりません。是非、この定型メモ用紙を貴社用にカスタマイズしご活用下さい。