業務効率化にAIツールを導入する際の注意点。要点整理と導入例3社
業務効率化を行うに当たり、AI(人工知能)をはじめ、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)やBotを導入する企業が増えています。これらのツールを導入するメリットとデメリット、注意点について、導入した3社を例に見ていきましょう。
業務効率化を支援するツール
近年、身の回りにはAIやIoT(モノのインターネット)をはじめとした、さまざまなテクノロジーを見かけるようになりました。こうしたテクノロジーは業務にも浸透しつつあります。
業務効率化を支援するこうしたテクノロジーにはどのようなものがあるのでしょうか?
AIをはじめ、導入が増えるBotやRPA
AIを組み込んだBotや、RPAツールを導入する企業も増えつつあります。
BotもRPAも自動化されたタスクを実行するアプリケーションですが、Botはアラームの通知など個人デバイスでも使われることがあるのに対し、RPAは主にルーチンワークを自動化するためのツールとして使われます。
またBotの場合、AIが加わることで自動的に学習し、より洗練された会話や動作が可能になることもあります。今後、こうしたツールはますます便利なものが出てくるでしょう。
AI導入のメリット・デメリット
AIは、さまざまな業務・業態で活用されています。今後ますます活躍の場は増えてくると予測されていますが、自社で導入するに当たっては、メリットとデメリットの両方を把握しておく必要があるでしょう。
AIを導入するメリットには、以下のようなものがあります。
- 労働不足を解消できる
- データの分析や予測ができるようになる
- 人の作業を減らすことができる
一方、代表的なデメリットとしては以下のようなものがあることも覚えておきましょう。
- 導入コストが掛かる
- ある程度データを入力する必要があり、初期は手間が掛かる
- 責任の所在が見えにくくなる
長所を生かし、短所に対しては対策を練った上で導入することが求められます。
AI活用で効率化が期待できる業務
AIを活用することで実際にどのような業務を効率化することができるのでしょうか?AIツールで対応可能な業務内容を下記にまとめました。
顧客の問い合わせ業務
サービス業や販売業務において、顧客からの問い合わせにAIツールを導入する企業は多くあります。
オーソドックスなのは『チャットボット』と呼ばれるツールです。これは、従来、カスタマーセンターなどで人間が行っていた顧客への質疑応対をBot(機械)によって自動的に行うというものです。
チャットボットの導入により、人的コストの削減やカスタマーデータの自動収集が行えるようになり、顧客対応のマニュアルはもちろん、会社の業務方針を見直す契機となることがあります。
営業パターンや戦略を学習
かつては顧客の元へ直接訪問する営業スタイルが強かった日本ですが、現在はインターネットの普及もあり、テレワークなどを活用したリモートでの営業も増えてきています。
それに合わせて、SFA(営業支援ツール)やCRM(顧客関係管理)システムを導入し、より成約率の高い見込み客の抽出や顧客ごとの詳細なデータ管理、さらには営業スケジュールや担当者の割り当てなども、AIで行えるようになってきているのです。
AIはそうした営業戦略を学習し、より確度の高い戦略を打ち出すことにも役立ちます。
人やモノの管理をスマートに
人事業務や在庫管理も、AIの導入によって効率化が進んでいます。
NECソリューションイノベータ社の『HRテッククラウド』は、AIが従業員の持つスキルや勤怠データを分析して、配置やシフトを適時に人事担当者へ情報提供する機能を有しています。人材管理の面で人事のタスクを助けてくれるツールです。
また、在庫管理においてもAIによって行う企業が増えています。出入荷に合わせた在庫の移動や期限管理はもちろん、最近では出荷指示が発生した商品を自動でスタッフの元へ運ぶ運送ロボット『Butler』の登場など、めざましい進歩を遂げているのです。
ツール選びで考えるポイント
ここまでの説明から、AIを非常に便利で、かつ自動でさまざまなことを行ってくれるものと捉えた方も多いでしょう。ここからは、AIをより効果的に導入するためのポイントについて把握し、費用対効果を高めていきましょう。
ターゲットとなる業務内容を絞る
AIは徐々に学習していくことで賢くなっていきます。言い換えれば、学習機会の少ない導入初期は想定通りのパフォーマンスを発揮できないことも、珍しくありません。
すべての業務に対して1度にAIを組み込んだツールを導入しようとすると、仕事のパフォーマンスが下がってしまうばかりか、現場が混乱してしまうことも考えられます。
そこでまず、導入のポイントとして、ターゲットとなる業務内容を絞り、そこにスポットを当ててツールを導入するようにしましょう。
自社で抱えている課題とAIが効果的な業務に導入することで、導入初期の混乱も少なく、徐々に学習させながら有効活用することができるようになります。
AIの使いやすさとコストも考慮を
ツールの使いやすさも重要です。直感的な操作で使えるかどうか、普段の業務フローにそのままツールを組み込めるかどうかを、導入前に検討しましょう。
多機能ではあるものの操作のしにくいツールや、AIツールを導入するために本来の業務フローを変更するとなると、本末転倒です。
また、AIを組み込んだツールはコストが高額になってしまうことも少なくありません。導入後にツールによって得られる恩恵が、コストと見合うかどうかも事前にシミュレーションしておかないと、赤字のツールを運用することになってしまう恐れもあります。
主なAIツールの例
ここからは、実際に開発され、企業に導入されたAIツールを用途や効果ごとにご紹介します。自社で導入する際の参考にしてみてください。
コールセンターで活躍 IBM Watson
IBMは日本唯一の中小企業政策を実施する支援機関です。そのIBMが開発したAIである『IBM Watson』は教育やマーケティングをはじめ、さまざまな分野で活躍していますが、今回はコールセンターに特筆して見ていきましょう。
24時間コールセンターでの顧客対応を支援するだけでなく、会社と顧客のやりとりをテキストに書き起こし、過去の何百万件ものデータの中から、顧客が最も求めている回答を瞬時に見つけ出して提案してくれます。
IBMのホームページからは、どのように導入したら良いかのステップや適正について診断することもでき、導入のしやすさも抜群です。
『IBM Watson』公式サイト
経営分析エンジン SHARES AI
『SHARES』とは、AIを利用した経営分析エンジンで、従来の経営分析サービスのように売上推移や財務分析指標などをグラフ化するだけでなく、同業種の企業との比較や融資の申し込みの最適な時期のアドバイスなど、まるで経営顧問のようなアドバイスをしてくれます。
会計士への依頼していた分析業務を行ってくれることで費用削減につながるだけでなく、会計士の提案が最適であるかどうかをセカンドオピニオンとして判断する材料とすることもできるツールであり、経営面を補助してくれるのに最適です。
『SHARES AI』公式サイト
社内問い合わせ対応専用AIチャットボットMy-ope office
人事業務の負荷となる要因の一つは、意外なことに社内従業員からの問い合わせです。経費の申請や社内ルールへの問い合わせ、その他の相談ごとなど、企業規模によっては1日で何百件にも及ぶことがあります。
『My-ope office』は、社内からのそうした問い合わせを自動で行うAIチャットボットです。チャットも直感的に使いやすく、24時間365日、待たされることなく各社員に対応できるためストレスがありません。
新人社員への対応や資料提供といったやや複雑なアクションにも対応可能で、人事の負担を大幅に減らすことができます。
『My-ope office』公式サイト
まとめ
AIは人事・経営分析・マーケティングの支援など幅広い分野に進出していて、AIが導入されているツールを利用することで業務負荷を劇的に削減することも不可能ではありません。
AIは自動的に学習し、データが増えるほどに精度が上がっていく特徴があるため、将来的には単純なツールよりも人の手が掛からなくなることに期待できるでしょう。
ただし、AIはデータが希薄な導入初期の段階や、AI非搭載のツールと比べるとコストが高くなってしまうという課題もあります。
この課題を解決するためにも、自社業務の中で何にAIツールを導入するのが最適か、そして将来的にどうのような運用をしていくのかまでを考える必要があります。